満中陰に揺れる想い

2004年2月18日
仏教では、人が亡くなってからの四十九日間を中陰と言う。

次の新しい生に生まれ変わるまでの、現世と来世の中間という意味があるんだけれど、ちょうど四十九日目のことを満中陰と言って故人が生まれ変わる世界が決定する日でもある。だから、この日に手厚く法要をするんだね。


先生の四十九日は明日だけれど、当日は親族などの近親者がいらっしゃって忙しいはずだと思い、今日伺うことにした。


仕事を終えて夕方行ってみると、ちょうど先生の鍼灸学校時代の同級生が2人来ていた。
ぱっと見て、思わず「先生の後輩ですか?」と聞いてしまったけど、考えたら彼らは平均的な27,8歳の風貌。先生の方がその年にしては落ち着き過ぎていたんだった・・・。

案の定、彼らが鍼灸学校で初めて先生に会った時、「この人脱サラなんだな」と思ったそう。大爆笑だった。

先生と彼らは、今年で10年になるという長い付き合いだった。当然先生の家族とも馴染みの仲だから、おばちゃんとおばあちゃんも加わって鍼灸学校時代の昔話に花が咲いた。

開業してからの先生しか知らない私にも、鍼灸師になるべく日夜勉強にいそしんでいたり、友達の家で一晩中テレビゲームに没頭したりしていた先生の姿がありありと目に浮かんで本当に楽しかった。

私が最後に先生と会った日、先生は合コンについて熱く語っていた・・・

「ティダさんなぁ、合コンはな、詰め将棋みたいなもんやで。相手の女の子の出かたを慎重に読んで次の手を打つ・・・もちろん、友達との連携プレーは大事や。こっちがいくらその気でも、向こうが同じ土俵に立ってるかどうか確認せんと何にもできひんからな〜!」

合コン経験が皆無に近い私は、「はぁ・・・そんなもんですかねぇ。」くらいのノリで聞いていた。しっかしこの人、どんなジャンルの話も熱く語るなぁ〜と感心しつつ。

ところが、肝心の合コンで先生は女の子ウケが良くなかったみたいだ。

同級生2人の話によれば、彼らは先生に「とにかく女の子の前で治療の話はするなよ!!」と念を押していたらしい。

それでもお酒と食事が進んで盛り上がってくると、先生はついつい「ちょっと脈見せてみー。」と言ってしまう・・・

あかんやん! 先生は本当に脈を診たいだけかもしれないけど、女の子にしてみたらただの「やらしいオッサン」状態やんか。

横からヒジでつついて「やめろや〜」と忠告する友達もお構い無しに、とうとう「舌、ベーしてみ」。

あ〜あ・・・患者さんでもないのに、お酒の席で舌診してどーすんですか。女の子、思い切り引きますよねぇ・・・。

んで、最終的にどの子が好みかと聞かれて「あかん。波長が合わへん。」で終了だったらしい。

でもまぁ、先生らしい話でこれまた大爆笑だったわ。
ほんと、もうちょっと早くこの話を聞いてたら思いっきり本人に突っ込んでやったのに。

患者さんの恋愛に関しては、最初から見ていたのかと思うくらい全てお見通しだったのにね。



そうこうしているうちに、お父さんが仕事を終えて帰ってきた。スーツ姿のまま私達と一緒に晩ご飯を食べ、数々の思い出話に笑ったりしみじみしたりして過ごした。

その間、仏間のテーブルに置かれた先生の遺影はこっち側を向いていて、一緒に話に加わっていた。
気のせいか、今日の先生は何だかとても若く見えたよ。



四十九日が過ぎると「忌明け」となり、これまで矢次早やに続いた法事は一段落する。それだけに、家族の皆さんにとっては悲しみが新たにこみ上げてくると思う。

この日、すっかり長居をしてそれでもまだ話は尽きなかったけれど、やっと先生宅を後にした。
玄関で見送ってくれたお父さんが、「また来て下さいね、待ってます」とおっしゃった顔が目に焼きついて離れない。

また行こう。相棒や友達を誘って、何度も行こう。

先生の言葉をもう一度、心に刻む

「愛情は繋がっている。生も死も超えて。」

満中陰・・・

先生が行くべきところにいらっしゃるのは、わかります。



だから、私からも感謝と祝福を先生に。

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