アウアウアウ。

久しぶりに・・・二日酔いです。

そう昨日は、しんどい一日だったの〜・・・


ずっとご無沙汰してた相棒の実家に2人で行ってきた。もちろん、今こんな状態だということは秘密にして。

夫婦としての私達が今にも崩れそうだと言うのに、お互いに対する気持ちがこんなにも不安定だと言うのに、実家に行って”相変わらずの仲良し夫婦”を演じ切れるのか・・・私は不安で仕方がなかった。

「向こうでは、極力普通に振舞うつもりだよ。」

相棒は身支度を整えながら淡々と言う。そりゃあ私だって、心配かけたくないから精一杯明るくしようと思うけど・・・。


車に乗って30分。私達はひと言も言葉を交わすことなく実家に着いた。

玄関を開け居間へ入ると、お父さんとお母さんが嬉しそうに笑いながら迎えてくれた。「久しぶりやな〜、元気やったん?」

必死の作り笑い。
言葉がうまく出ない。
だめだめ、変に思われちゃう・・・

相棒はいつもと同じように話しに加わっている。
私は、どうしてもいつもの席に座ることができず中途半端なところに固まって立っていた。

だめだ!

ゆっくりと、トイレに直行。
涙が溢れて止まらない。

お父さん、お母さん・・・ごめんね。ごめんね。
私達もう、夫婦ではいられないかもしれない。

色々あって辛かった時もあったけど、暖かい心の交流もたくさんあった。私は嫁としてケタはずれに至らなかったと思うけど、それでも受け入れて見守ってくれたのに。

離婚したら、悲しく辛い思いをさせてしまう。もう会うこともなくなるかもしれない。

ああ、こんな所で号泣するわけにいかない。
深呼吸したり無理やり笑ってみたりして、何とか気持ちを押し止めてからやっと居間に戻った。

「いやあ、お腹の調子が悪くって。」

心配そうな顔をするお母さんに、だいじょぶだいじょぶと笑ってみせる。誤魔化せたんだろうか、わからない。


しばらくゆっくりしてから、相棒・お母さん・私の3人は車で買出し。新しくできたスーパーに行って、日用品や食料を調達だ。

結婚してから何度も繰り返してきた、この平凡なひと時。
賑わう店内には、はしゃぎまわる子供を叱るお父さんや楽しそうな新婚夫婦・・・今の私には遠い世界に住む人たちに感じる。

買い物を済ませると、喫茶店で一休み。サンドイッチをかじりながら世間話に花が咲く。
でもね・・・この世間話がね。
結婚とか子供の話がほとんど。主婦の会話の王道だもんね。そうなるともういちいち胸が痛くて。

挙句の果てにはお母さん、「まあね、何が起こるかわからない世の中だから覚悟はしてるけれど。」

ううっ。何か嫌な予感したのかしら。

相棒は、いつもと変わらない様子で話を合わせている。でもその心の中は一体どうなんだろう?

夜、お母さんと2人で作ったおいしそうなおかずが食卓を飾る。

「これも、飲んじゃわないとね!」とお母さんが去年のボジョレーヌーボ(赤)を出してくれた。この偽りの家族団らんには、正直飲まなきゃやってらんねぇ!な私はグーイグイ。ああもう、何だか楽しくなってきた!

隣に座った相棒と、競うようにボトルを空けた。お父さんもお母さんもまっ赤っ赤、いつしか話は2人の若かりし頃の苦労話に。

50年連れ添った夫婦の昔話・・・感無量よ。
そんな2人だって、未だに犬も食わないことで喧嘩してる。結婚して、それが幸せかどうかなんて、死ぬ時わかればいいじゃん!

食べ終わってお皿洗ってデザートまで食べて・・・9時。やっと実家をあとにした。玄関先でお母さんが「気ぃつけてな。またおいで。」と見送ってくれる・・・酔眼にその姿が温かい。

そして帰り道
私はどうしても相棒と2人きりになるのが耐えられず、1人電車で帰ることにした。

「1人になりたいんだ。ちょっと1人で、飲みに行く。」

そう言う私を心配そうな顔で見た相棒・・・何か言いたそうだった。

1人で歩く駅までの道、晴れた夜空にきれいな月と星・・・あっという間ににじんで見えてくる。



気がついたら、電車を乗り継いで最寄り駅まで帰って来ていた。改札を出て家とは反対方向に歩き、お気に入りの飲み屋のドアを開けた。程よく暗い店内の、落ち着けるカウンターの角に腰を下ろすと全身の力が抜ける。

梅酒に冷やしトマトとあたりめを注文して、しばらくは頭の中が真っ白だった。心を押し殺して過ごした時間とさっきのワインで、思考もせき止められていた。

少〜しずつ、自分が戻ってくる。
ポロポロポロッと、涙がこぼれ落ちた。


「あたりめ、好きですか?」


どこから声が聞こえるのかわからないまま顔を上げると、カウンターの向こうから首を覗かせているバイトの男の子が見えた。


「え? ああ・・・大好きなんですよ、コレ。」

「そうなんですか。いいですよね、あたりめ。僕も好きなんです。美味しいですよね。すっごくいい匂いですよね。」

ちょっと照れ臭そうな、何だか素朴な彼の表情と言葉に、一日中忘れていた自分らしい笑顔を私は取り戻した。

女の人が1人で飲みに来るなんて、めったにないだろう。それだけに何か訳があることを、彼もうすうす分かっていたみたいだった。気にかけてくれたのか、それからは仕事の手が休むたびに声を掛けてくれ、私達は言葉少なに、でも熱心に他愛もない話をした。そして時々私がうつむいているのを見ると、彼は何も言わずに放っておいてくれた。

七輪の上で身をくねらせるあたりめをボーッと見ながら、2杯目の梅酒を飲む。感情の輪郭がぼやけてしまって、ただただ私はそこにいた。他に何組かのお客がいるのに、店の角にいる私の周りは不思議なほど静かで・・・。


そう言えば、いま何時なんだろう・・・

携帯を見て初めて、相棒からのメールに気がついた。

「まだ飲んでる?今日は悪かった。辛い思いをさせてしまった。」

私はひらがなだけで返事を書き、居場所を伝えた。この店は一緒に来たことがあるから彼も知っている。

何故かむしょうに、香港にいる友達と話したくなった。すでにロレツも怪しくなってるのに。

酔った頭でめちゃくちゃな広東語を操り泣きごとを言う私を、家でテレビを見てくつろいでいたマシューは、寛大な心で受け止めてくれた。ああ、香港の弟よ。多謝、多謝!!

そして気がつけば・・1時。もう閉店だ。
名前も知らないバイトの彼にお礼を言って店を出る。携帯には相棒の「もう帰っておいで」というメールが2通と着信が2回。気がつかなかった・・・。もうベロンベロン。

家までの道を、どうにか歩く。夜空を見上げるとそこに先生がいるような気がして、もう号泣。先生の鍼と声と笑顔で助けられていた自分をひたすら思い出そうとした。

ぐちゃぐちゃの顔で家に帰ると、相棒が私を待っていた。でもすでにきちんと話もできない状態の私は、歯を磨いて着替えるのが精一杯。

「待っていてくれてありがとうね。おやすみ。」

今にも泣き出しそうな顔をした相棒にそう言って、布団に倒れこんだ。



今朝・・・。
半分死んでる私に、そっと「行って来ます」と囁いて相棒は出かけていった。

何かが変わったのだろうか。

何も変わらないのだろうか。



もう、あんなお酒を飲むのはよそう。

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