大阪のど真ん中、梅田スカイビル。ここの中庭が自然の景観を取り入れた造りになっている。ビルの谷間を川が流れ、両側には大きな岩と潅木の茂みや背の高い木々もあってこんもりと囲まれている。

友達が、「大阪でも蛍が見られるよ!」と言って教えてくれたのがここだった。今、特別に岡山の山奥から持ってきた蛍をここに放流しているのだった。


私がまだ小学生になったばかりの頃、母の実家の福岡にみんなで遊びに行った時に初めて蛍を見た。

見たらしい。

残念なことに記憶がないので、私の中ではまだ「蛍を間近で見たことがない」ということになってしまっていた。

そこでさっそく、その友達といそいそと出かけていった。



すると、薄暗い庭園に人だかりがしている。いよいよ「ナマ蛍」とのご対面だ・・・期待は胸いっぱいに広がる!

前の人の頭越しに、暗がりを覗き込む。緩やかに流れる水の音と同時に目に飛び込んできたのは、小さくて儚い緑色の光の群れだった・・・。

なんて綺麗なんだろう。

言葉も無く、息を潜めてただただ見入っていた。ゆっくりと点滅する小さな緑色の粒。暗くて蛍自体は見えないけれど、2匹がよりそったり不意にふわぁ〜っと飛んだりして、「生きてる」ことを感じさせる。生命の息吹という感じだ。

あれ?  あれれ?

不覚にも涙が滲んできた。  最近涙もろいなー。


友達の実家の近くは、毎年蛍がたくさん飛ぶらしい。去年は数が激減していたらしいが、一昨年は何千・何万匹という数の蛍が川沿いの茂みに集まって、緑色の輝くじゅうたんのようだったと言う。オーマイガッ!!

「蛍はそのくらいの数が集まると、呼応しあって点滅のタイミングがみんな同じになるんだよ。それはそれは綺麗で・・・。」

友達の話が、頭の中で画像になってゆく。今目の前で光っている蛍はせいぜい30匹くらいだけど、これが100倍になっていっせいに瞬きだしたら・・・・

「ほ〜た〜るのひ〜かぁ〜りっていう歌があるでしょ。たくさん集まれば、実際に蛍の光で本が読めるくらいだと思うよ。」


ああ、友達が羨ましい。そんな光景を見たこと無い私は、人生で何かすっごく大きな損をしているような気分にさえなった。

そうそう、返す返すも残念だったのが携帯やデジカメでフラッシュをたいて蛍を写す人がけっこういたことだった。
蛍愛好家の心優しき友達は、憤りを隠せない。

「蛍の生体リズムが狂っちゃう。弱りやすくなるし、明るい方には絶対来ないからどんどん向こうへ行って逆効果。」

確かに、誰かがフラッシュをたく度に蛍の点滅がいっせいに消えてなかなか光らなくなる。ああ、可哀想だよ・・・。

これから蛍を見に行く方は、どうか気をつけてあげて下さい。
まず、フラッシュなんてたいたらあの淡い美しい光は絶対写りませんから。友達は感度の高いビデオを使い、フラッシュなしでやっとの思いで数匹の光をうまく写していました。



蛍・・・・

蛍・・・・

不思議な生き物。



初夏の夜、帰り道の私達はあの淡い光が胸に灯ったように、ほわ〜んと優しい気持ちになっていました。

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